人生最期の仕事を決めている男は凄い
今の自分はなぜ存在しているのか?
とある、一流の職人の話を聴かせて頂いた時のことだ。
その職人は世界的にも有名で、その人に会うために、その人の卓越した技で作られた物を得るために世界中からその人の下へ訪れる。
スーパー親分なその人には弟子も何人も輩出していて全員が一流と認められている。今でもたくさんの弟子を面倒見ていて、これからも一流の職人を輩出していくだろう。
そのスーパー親分は日本の人口減少、少子化を非常に危惧している。このままでは衰退しか道がないからだ。なので、会う若者には「3人は子ども作らないとダメだよ!」と必ず伝えている。
職人には「弟子は3人は輩出しろ」と伝えている。最近は弟子を抱えずに自分だけで仕事をして、それなりに儲けて、俺は凄いんだ!と勘違いしている奴らが多いとスーパー親分は言う。
「今のお前がいるのは師匠に教えてもらったからじゃないのか?それなのになぜお前はその技を、文化を、哲学を次に伝えていかないのか?お前が次に伝えていかないということは、お前で流れを堰き止めてしまっているってこと。それでは少子化と同じで衰退するしかないんだぞ」と、そう熱く語る。
サスティナブルって言葉がある。
持続可能性というやつだ。例えば地球の資源、植物。この植物の身体は何でできているのか?根っこから吸い取ったものではなくて、実は空気中の二酸化炭素の炭素で出来ている。空気からできた植物を草食動物や虫、はたまた人間が食べる。植物を食べて、炭素を取り込んだ動物はその炭素で身体を作る。動物もまた何かに食われたり、食われずに細菌の力で朽ちてしまったりする。
朽ちた動物の肉の炭素は土となり、海に流れて、やがて空気となり、また植物に帰ってくる。
本当の意味でのエコ、つまりは生態系という意味でのエコサイクルとはすでに完璧までにサスティナブルにデザインされているのだ。
質量保存の法則、等価交換の原則、これを無視しないからこそのサイクルだろう。
どこかで淀んだり、止まったり、減ったりしてはいけないのだ。
スーパー親分はこれを地で理解している、これまでの人生経験で本能的に掴んでいる人だから凄い。
「このままではいかん。滅びるだけだ。そう職人たちに言っても『そんなこと言われても僕は他所の人と繋がりもないから、知らない人たちのことなんて構っていられないです』と言われて誰も動かない。だから、俺は次世代が技術も文化も継承していける仕組みを作る!それが俺の最後の仕事だ!」
凄い。もう60歳を過ぎているのに、誰よりもエネルギー溢れている。ここまで成功した男が、まだこれから最期のデカい仕事に取り掛かろうとしている。それも次世代が発展していくための仕事に。
弟子のため、子どものため、孫のため、そうやって素晴らしい世界を作り、託そうとする男は、男の中の男だなと感じた。