「否定しない」付き合い方
若手ビジネスマンからの相談
「マネジャーってどんな人がいいと思いますか?」
とある若手ビジネスマンから受けた相談。
話を聴くと、その人のチームのマネジャーは否定から始まり、否定で終わるそうだ。
だからか、ミーティングでそのマネジャーがいる時はメンバーが萎縮してしまって、意見も出ないし、議論も活発化しない。
どうせ言っても否定されるし、マネジャーのやりたい事を通して、それで決まりなんでしょっていうか、どうせやる事決まってんでしょみたいな空気があるらしい。
だから誰も何も言わなくなってしまったのだが、マネジャーは皆んなが意見を言わない状況にも不満があるそうだ。
「みんなちゃんと考えている?」と、イラつきながら言われるらしい。
「人望が集まる人の考え方」
私の好きな本で「人望が集まる人の考え方」というレス・ギブリンが書いた名著がある。
その本には、”人は承認されたがっているし、自分は重要だと感じたいと思っている。それが満たされない時に人はその組織を去る。”みたいなことが書かれている。
これは本当にその通りだと私も思う。
人は自分が一番大事だと思っている。
自分を一番大事だと思っていない人は、自分以外も大切にはできない。
自分は有能だと感じたいし、自分は他人から必要とされていると感じたいし、自分は誰かの役に立っていると感じたい。
それが人間なのだ。
そう感じられる事がやる気につながったり、創意工夫につながったりする。
いわゆる“モチベーション(動機)”というやつだ。
否定しない。
承認をする。
たったこれだけで人は自発的に主体的に学び、考え、実践していく。
私のチームでのこと
ある地域を活性化させるプロジェクトチームとして、私を含めて5人のメンバーが集められた。
メンバーの力量から考えて、いきなり何かを具体的に決めて実践できるわけではなかった。
まずは「活性化させるとはなにか」という、ゴールの言語化と認識を統一・共有するところから始めた。
とにかく私は発言を控えて、メンバーからの意見を板書して、まとめることに徹した。
それで活性化のゴールが決まって、次に現状はどうなっているのか?をメンバーに質問した。
「なんだか寂れている」
「盛り上がっていない」
「隣の大都市に比べて面白みがない」
などなど、出てくる意見は粒度が粗く!誰も正確に現状を把握していなかった。
それであればと、まずはそれぞれがその地域の事を調べて、ちゃんと知ることから始めようとなった。
「○○さんはなにを調べてきます?」と、わたしがしたのは問いかけるだけ。なにを調べるかはメンバーそれぞれに決めてもらい、次のミーティングで発表してもらった。
発表の次はそれぞれが発見した課題に対して、具体的にどんな事をして解決していくかを決めていってもらった。
「じゃあ、具体的にはどんなことやってみます?」と質問して、私は壁打ち役を担っただけ。決定事項はすべてそれぞれのメンバーが個別に決めていってもらった。
「○○をやってみたいと思います」と課題解決のゴールが決まれば、「良いですね!じゃあ、次のミーティングまでにステップ1をやってみましょ!」って感じで、それを承認して、実践してもらった。
議論は非常に活発に行われていたし、メンバー誰もが主体的に関わっていたと思う。
少なくとも私から「意見ないですか?」とか「これやってください」とか言ったことはなかった。
ここで決めた事の全てが形になったわけではないし、今もプロジェクトは進行中なのだが、いくつかは上手く事が運んで、少しずつ成果も出てきている。
否定しない付き合い方をするだけでメンバーの活動は変わるのだ。