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「否定しない」を否定している自分を否定しない事はできるか?

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「他人を否定しない」という教えがある。

マネジメントに関する書籍には大体これが書かれている。
社会福祉の相談援助の大原則でも「全受容」という言葉があって、否定せずに関わることがデフォルトとしてある。

「他人を否定しない」を実践するときに、それが腹落ちして自然と実践できる人と、そうするべきだと頭で考えてする人がいる。

後者は「否定しない」を”実は否定している自分”を否定している事になるのがわかるだろうか?

 


研修を兼ねた旅行の計画を立てているとしよう。
チームリーダーは1日目の行動計画に関してはAさんに一任した。
数日後にAさんが出してきた行動計画は当たり障りのないものだった。
そのままでも問題はないが、特段面白い感じもしない。
リーダーは率直にこの案は嫌だなと感じた。
この時のリーダーの感情はAさんの行動計画案を否定している状態だ。

Aさんの行動計画案を否定するか。
Aさんの行動計画案を否定している自分を否定するか。
どちらかになってしまう。

リーダーは「否定してはいけない」というルールを守って、その計画案を承認した。

当然、旅行の1日目は特に盛り上がることもなく、面白味のない日となって、不評だった。

 


このリーダーにはいくつかの課題がある。
1つは、「否定しない」を頭で考えて行おうとしていること。
なぜそうなるのかというと、「他人に期待している」から。
そして、否定することなく、その人自身がより良いものにしていこうとする意欲や気づき、能力を与えるスキルがない。
これを「エンパワメント」と社会福祉の専門用語で言ったりする。(最近ではビジネス書籍なんかでも見られる言葉になってきた。)

 


「否定しない」を否定している自分を否定しない事はできるか?の問いの答えはどうだろうか。

他者を否定している自分を否定していると必ず歪みが生じる。
心の底から「否定しない」に納得していないのであれば、実践しない方がまだマシだ。
特にリーダーはそうだ。

「裏では何か思ってそう」
「本当のことを言ってくれない」
「私のことを信頼してくれていない」
上っ面だけで否定しないを実践していると、メンバーからはそんな風に思われてしまう。

なので、「否定しない」に心の底から納得ができていない自分を否定して、他人を肯定するのはやらない方がいい。

だけど、そうなると「否定しない」を実践できなくなる。
他者を無理やり肯定しようとすると自分を否定することになり、自分を肯定しようとすると他人を否定することになる。

「否定しない」を否定している自分を否定しない事はできるけど、その場合は他者を否定してしまうことになる。

リーダーから否定されているとメンバーはその組織から早々に去ることになる。
人間は他人から承認されたい生き物だし、承認されることで自己重要感が満たされる。

だから、マネジメントの本なんかでは「否定せずに関わりましょう」と書かれているのだ。

ただ、上っ面で承認しているだけだとそれはそれで弊害が生まれる。

どうすれば心の底から「否定しない」ができるのか?

 


その答えが「他人に期待しない」なのだ。
期待しなければ否定することはない。

旅行の行動計画案だって、作ってくればまだマシ。最悪なにも作ってこないなんてこともあり得る。もしくは訳の分からないものを作ってきて、めちゃくちゃ意地になってそれを突き通してくるなんてことも。
「これぐらいのクオリティを作ってくるだろう」ななんて一切合切の期待を排除して仕舞えば、心の底から否定せずに関わることができる。

否定するものがないからだ。

でも、旅行が面白くないのは問題だ。
面白い方が自分もメンバーも、その案を出してきたAさんも満足できるし幸福度が高まる。

否定しないまま、より良いものにAさんにしてもらうにはどうすればいいか?

そこでエンパワメントが登場する。

Aさんに能力を与えて、自分で気づいてもらうのだ。
それを実現するのが1on1などでの会話スキルや質問スキル、ディスカッションスキル。
視点を変え、気づきを与えて、自身の力で解決していく。
そうすれば否定することなく、より良くすることができる。

 


勘違いしてはいけないのが、そもそもAさんが旅行を面白くしたいと思っていなかったらダメだし、Aさんが能力や素養のない無能な人だったらダメなのだ。

それは完全なる人選ミスってやつだ。

出来る見込みのない人に出来ないことをやらせて、「もっと良いもの作ってこい!」なんてことを言うのは、そのリーダーがそもそも無能な証拠。

それは否定しないとかそういうレベルの問題ではないので注意してほしい。

 


他人を否定しない。
他人に期待しない。
他人の力を引き出すエンパワメント。

これで「否定しない」が実現できるだろう。